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日本酒の原料と製法

日本酒はいろいろな種類があって、好みの味わいの日本酒を見つけるのが難しいと思います。

まずは日本酒の定義と原材料・製法を詳しくみて自分の好みの日本酒を見つけるヒントにしていただければ嬉しいです。

目次

日本酒の定義

はじめに日本酒とはどのように造られているお酒なのかを簡単に解説します。

日本酒はお米を使って麹菌の発酵作用を利用して作られる醸造酒です。

使用できる原料が法律で定められていて、米を使うこと、そして「こす」という工程を必ず入れなければならないことが特徴です。

日本が長年育んできた日本酒の価値を保全していくため、国税庁は平成27年12月に地理的表示として「日本酒」を指定・保護しています。

海外で造られる日本酒は、厳密に言うと清酒に区分されます。当然日本酒も清酒の中の1つの種類の飲み物です。

日本酒の原料

日本酒の主原料は米・水・麹ですがそれぞれに細かい規定や種類があるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

お米

原料になる米は一般的に酒造好適米という日本酒造りに適したお米が使われます。特徴は以下のとおりです。

  • 粒が大きい
  • 心白の出現率が高い
  • 精米するときに砕けにくい

1つずつ解説します

酒造好適米の粒が大きい理由

日本酒を造るときに、お米の表面を磨きます。

なぜかというとお米の表層部に多く含まれる脂質・ビタミン・タンパク質が出来上がったお酒の香りや味を悪くしてしまうから。

出来上がる日本酒を好みの味わいにするために、お米の表面を磨いています。

心白の出現率が高いとなぜ良いか

心白とはお米の中心部の白濁しているところで、デンプン質が多く雑味のもとになる脂質・ビタミン・タンパク質の含有率が少ないので、心白を使うことによって雑味の少ないスッキリとした味わいになります。

また心白はでんぷん質の組織に隙間が多く米の内部まで麹菌が入りやすいので、強い糖化力のある米麹ができます。

お米一粒のなかで心白の出現率が多いと、同じお米の量でより多くの日本酒が出来上がります。

また、お酒を造る責任者の杜氏や酒造メーカーの好みによってお米を磨く割合が決まっています。

精米するときに砕けにくいと……

精米するときにお米が砕けてしまうと、削ったはずの外側の部分の脂質・ビタミン・タンパク質が精米したお米と混ざってしまい、雑味の元になるから砕けにくいお米が求められます。

日本酒を造るお米を作るとき、洗米するとき、蒸すとき、アルコール分を調整するときといろいろな場面で水が必要になります。酒造りに必要な水の量は仕込みに使うお米の約50倍。なので日本酒を造るときの水は重要になります。

水にはミネラル分が含まれていてその量によって硬水や軟水に分類され使う水の硬度によって日本酒の味わいや風味が決まるのです。

ミネラル分が多く含まれる硬水を使って造られる日本酒は、輪郭のはっきりしたキレのある味わいになる傾向があります。

一方、ミネラル分をあまり含まない軟水を使って造られる日本酒は、やわらかくまろやかな口当たりになる傾向があります。

出来上がった日本酒の約80%が水で出来ているため、味わいを決めるのに重要です。

お酒を造る麹は菌の種類によって黃麹菌・白麹菌・黒麹菌・紅麹菌とありますが、日本酒造りに使われる麹は黃麹菌です。

蒸したお米に麹菌を混ぜ合わせ培養したものが麹になります。

麹にはでんぷん質を分解して糖分にする酵素(アミラーゼ)が含まれていて、甘みや旨味を引き出します。

酵母

日本酒酵母・ワイン酵母・パン酵母・ビール酵母などいろいろな種類がありますが、作用は同じで、糖類を分解してアルコールと二酸化炭素に分解することです。

日本酒酵母はきょうかい酵母と蔵つき酵母があります。

きょうかい酵母は「日本醸造協会」が培養して各酒蔵に頒布しています。発酵力や品質の良さが安定しています。

一方、蔵つき酵母は酒蔵の建物や床・壁などに自生している天然酵母です。なのできょうかい酵母にはない味わいや、香りを生み出すことが出来ます。また、培養することが難しいので使用されている割合は少なくなっています。

乳酸菌

乳酸菌は酒母を造るときに不要な雑菌を死滅させるので、酵母が増殖しやすい環境が整う。そして最後は酵母が作り出すアルコールによって乳酸菌も死滅します。

乳酸菌が活躍することで造られる食品はヨーグルト・漬物・納豆などがあります。

日本酒の製法

精米と枯らし

日本酒を造るときのお米は酒造好適米という、日本酒づくりに向いたお米です。表層部には脂質・ビタミン・タンパク質が多く含まれているので精米をします。

精米はできあがる日本酒のあじわいによって磨く割合が変わります。特定名称酒では磨きの割合が決まっていて以下の通りです。

純米酒精米歩合規定なし
純米吟醸酒精米歩合60%以下
純米大吟醸酒精米歩合50%以下
特別純米酒精米歩合60%以下または特別な醸造方法
本醸造酒精米歩合70%以下
吟醸酒精米歩合60%以下
大吟醸酒精米歩合50%以下
特別本醸造酒精米歩合60%以下または特別な醸造方法

以上の規定によって特定名称酒を明記することができます。

また、磨いたお米は摩擦によって熱をもっているので水分が蒸発してしますので、3週間ぐらい冷暗所で保管することで内部の水分を安定させる目的があります。

洗米と浸漬

洗米の目的は磨いたときの糠や米くずが、表面に付着しているのを洗い流してできあがる日本酒の味わいや風味を良くするためです。

洗米が終わったお米を水につけて(浸漬)、蒸しあがったお米の状態を均一化させることが出来ます。

蒸しと放冷

お米を蒸すのは、お米のでんぷん質をα化することが目的で、必要以上の水分をお米に吸収させないためで、蒸し上がったお米は外側がしっかりしていて内側が柔らかい(外硬内軟)の状態が理想です。

外硬内軟に蒸し上がったお米は、一粒一粒がよくほぐれて 麹菌が全体によく行き渡り、麹菌の生産する糖化酵素の作用を受けやすくなります。

次に、蒸したお米を麹菌が活動しやすい温度まで冷まします。温度が高すぎると麹菌が死滅してしまいますので麹菌が活動しやすい36〜38℃を目標にします。

麹造り

麹菌が活動しやすい温度になった蒸米全体に麹菌を振るい、お米一粒一粒に麹菌が付着するように混ぜ合わせ、温度38℃・湿度80%のこうじ室という部屋で2日間寝かせて麹が出来上がります。

酒母づくり

酒母は蒸米・麹・日本酒酵母・水・乳酸で造られ、アルコール発酵に必要な日本酒酵母を増やすことが目的ですが、日本酒酵母は弱いため乳酸が必要になります。

乳酸が増加することによって酒母が酸性になり、日本酒酵母菌以外の菌の活動が鈍るか死滅して、日本酒酵母菌を安定して培養できる環境になるためです。

乳酸を得る方法は、乳酸を添加する方法(速醸系)と酒蔵に自生する乳酸菌を増殖させる方法(生酛系)があります。

醪造り

醪造りは、必要なお米と水・酒母・麹すべてをくわえる三段仕込みが主流で、以下のように4日間かけて行われます。

  1. 初添(一日目):酒母、麹、水が入ったタンクに蒸米を入れる
  2. 踊り(二日目):何もしないで酵母の増殖を待つ
  3. 中添(三日目):麹、蒸米、水を入れる
  4. 留添(四日目):麹、蒸米、水を入れる

留添から一ヶ月くらいかけて発酵(醸造)させます。

アルコール添加

添加されるアルコールは主にサトウキビが原料で、添加する事によって以下の効果があります。

  • 雑味をアルコールが抑えるので、飲み口がスッキリ爽やかになる
  • 吟醸香の成分がアルコールに溶けるので香りが際立つ
  • 雑菌の繁殖を防ぐので、長期保存が可能になる

アルコールが添加された特定名称酒は、純米と表示していない日本酒です。

上槽

出来上がった醪を液体と酒粕に分けることを上槽といい、分けられた時点で日本酒の出来上がりです。

上槽の方法は槽搾り・袋吊り・自動圧搾機や遠心分離機を使った方法があり、以下の通りです。

槽搾り布の袋に醪を入れて、槽と呼ばれる型に入れてプレスして集める吟醸酒
袋吊り布の袋に醪を入れて吊るし、自然に落ちる部分を集める吟醸酒
自動圧搾機機械に醪を入れて圧力をかけて集める普通酒・本醸造酒・純米酒
遠心分離機遠心分離機に醪を入れ、分離させて集める普通酒・本醸造酒・純米酒
日本酒の搾り方の種類と対応しているお酒の種類

日本酒の醪の中に残っている米の状態などの条件によって上槽の方法が変わります。

澱引き

搾った日本酒に含まれる、細かいお米や酵母などの固形物(滓)を取り除きますが、タンクに放置して滓が沈んだら上澄み部分を取り出します。滓が混ざったお酒のことを滓酒や滓がらみと読んでいます。

濾過

濾過は滓引きしたあとに残っている細かい規定が滓を取り除きますが、その他に脱色や香味の調整、異臭の除去なども目的になり活性炭フィルターで行われます。

火入れ

火入れの目的は【酵素の働きを止めること】【火落ち菌などを殺菌すること】【酒質を安定させるため】【常温での流通が容易になる】などがあります。

また、お酒の種類によって、行われる回数も以下のように違います。

  • 生酒:火入れを全くしない
  • 生詰酒:貯蔵用タンクに入れる前に火入れをする
  • 生貯蔵酒:瓶詰めのときに火入れをする
  • 火入れ酒:貯蔵用タンクに入れる前と瓶詰めのときの2回火入れをする

火入れをしたお酒としていないお酒を飲み比べるとハッキリとした違いがわかります。

貯蔵・熟成

火入れをしたあとにタンクで貯蔵し6ヶ月から1年ほど熟成させることで、微量成分が温度や酵素によって酸化や分解などの変化をします。

新酒のうちは刺激的で荒々しい味わいだったり、新酒香があるのですがタンクで貯蔵・熟成することによって、まるみのある調和の取れたあじわいになります。

割り水

日本酒の原酒はアルコール度数20%を超えるものもあり刺激的なので、割り水をすることによって味わいや香味のバランスを調整し飲みやすくします。

原酒は割り水が一切されていない日本酒なのでぜひ試してみてください。

まとめ

原料や製法だけでも数多くあるので、お好みの日本酒を知るためにもお米の種類や造り方を気にしながら日本酒を選ぶときに参考になったら嬉しいです。

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